民泊を始める前に調べよう。地域での違い・上乗せ条例

民泊のことを調べていて、自分の地域で許可を取りたいと思ったときに、比べてみると他の地域と条件がちがったということがありませんでしたか。

これは都道府県や市町村が定めた「条例」の中身がそれぞれの地域によって違うからです。

それでは条例とはどういったものでしょうか。この記事では法律の仕組みと条例について解説していきたいと思います。

 

 

目次

法律は複雑

旅館業法など、法律の条文を読んでみたことがありますか?
読んでみるとおそらく・・

  • 漢字だらけで読みにくい
  • 回りくどい
  • (かっこ)が何重にも出てきて、どこまでの説明かもよくわからない。

なんでもっと分かりやすく書いてくれないのか。きっと、そんな感想を持たれるのではないでしょうか。そうです。法律は分かりにくいものです。

細かい部分は法律外できめる

そこをなんとか我慢して読み進めていくと、色々なところに、「条例でこれを定める」「政令で定める基準による」などのように、この法律より他のところで決めている部分があるのがわかります。

これは、この法律のなかで全てををガッチリ決めてしまうと、変更したい事項が出てきたときに、大変な手間となってしまうためです。細かいことは他の法規則に任せているのです。

通常、役所へ書類の交付を申請するときには、手数料がかかることが多いと思います。
例えば、この手数料を定めた法律ができたのはもう30年前のことで、時代の流れで物価も上がったことだし、これを250円から300円に値上げしたい、というような場合があったとします。

この50円の差額のために、国会議員が国会で審議して法律を決め直す、、、なんてしてられないですよね。もっと他に決めていかなければならないことがあるはずです。

ですからそういう細かい部分は「条例でこれを定める」としておくのです。条例ならば、地方自治体の議会できまりますから、国会よりは小回りがきいて、よりスピーディに処理がされるはずです。

 

法の優先順位と序列

「法」=「法律」 というような感覚がある方も多いと思いますが、実際には法の中にはいくつか種類があります。さらに優先順位もきまっています。

すごくザックリいうと、以下の種類があり、上のものが下のものに優先されます。

  1. 憲法
  2. 法律
  3. 政令
  4. 省令
  5. 条例

簡単に説明していきます。

憲法

国内の最高法規です。国民を権力から守るためのもので、最も強い力をもっています。

法律

国会の議決によって決められるものです。日本全国で通用します。

政令(せいれい)

内閣が制定する命令です。

省令(しょうれい)

各省の大臣が制定する命令です。

条例(じょうれい)

地方公共団体(都道府県、市町村)が議会で定める自主法です。その地域特有のルールが決められています。

 

また、非常にややこしいですが、法律と政令と省令をまとめて「法令」といいます。
国会を含めた行政機関がつくった決まりごととしてまとめるときに使います。

 

旅館業法にあてはめると

以上のことを、民泊のことについて書いている法律の「旅館業法」にあてはめると、

旅館業法(法律)

旅館業法施行令(政令)

旅館業法施行規則(省令・厚生労働大臣)

旅館業法施行条例(条例)

の順序となります。

この順序は上位のものに反する決まりは制定できません。つまり力関係としても

旅館業法>施行令>施行規則>条例 となっているわけです。

 

条例でできることとは

 

法律である旅館業法は次のように規定しています。

営業者は営業の施設について、換気、採光、照明、防湿および清潔その他宿泊者の衛生に必要な措置を講じなければならない

2 前項の措置の基準については都道府県が条例で、これを定める。

旅館業法第4条

 

さらに、条例について日本最上位の法である憲法で

地方公共団体は(中略)法律の範囲内で条例を制定することができる

憲法第94条

といっています。

このことから分かることは2つあります。つまり、

  1. 旅館業法に定められた施設の換気、採光、照明、防湿、清潔、衛生の設備のことは条例でそれぞれ細かく決める
  2. それ以外のことも法律の範囲内であれば条例で決めることが出来る

 

1については例えばトイレの個数があります。
これについても地域によって差が出ます。例えばトイレは1つあれば良いですよという地域と、2つ以上設置しなさいという地域とでは、許可の難易度がまったくちがってきます。トイレを増設するには費用が多くかかりますし、設置場所の制約もかなりあることだからです。

次に、2については法律の範囲内といいつつも、その範囲というのがどこまでかという複雑な問題があります。

簡単に言うと、法律で触れていない部分については独自に規制をつくって良い、言い換えると「触れていない部分は範囲内でも範囲外でもない」というような解釈です。

くわしく説明します。

上乗せ条例とは

法律である旅館業法では、玄関帳場(フロント)の設置の義務は書かれていません。

実際にはフロントについて規定があるのは旅館業法施行令ですが、この施行令のなかでも、ホテル営業と旅館営業にはフロントの設置義務がある事は書かれていますが、通常民泊のための許可である簡易宿所営業のところではフロントについては記述がありません。

この、法律には書かれていない部分であるフロントを条例で独自に設置義務とすると法律の縛りが厳しくなる(上乗せされる)が、法律には反していないという解釈です。これが上乗せ条例です。

もし仮に、旅館業法に「簡易宿所にフロントを設置するという義務を条例で付け加えてはいけない」と書かれていれば、条例によるフロント設置は法律に反するということになります。よって、条例で独自に設置義務とすることはできません。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

少しややこしいですが、法律には、その法律の中だけでは決めきれないことがあり、細かいことは関係する政令、省令の中で決めるようなしくみにしてあります。

また、地方の事情などにより個別にルールを設けることを条例に任せています。この個別ルールの差があなたの地域と他の地域の差になって、許可の難易度の違いとして現れてくるのです。

インターネットの情報を見て、◯◯市の条件はクリアできているから、自分の市でもオッケーだろう。という考えは危険です。必ずその地方の専門家や保健所に相談をしてみましょう。

その際、条例が緩和されるのを待つか、または上乗せ条例が設定されていない地域で物件を探すのもいいかもしれません。

 

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この記事を書いた人

夫婦で行政書士事務所を運営しています。
3児の父です。
家族を連れて、日本各地の民泊に泊まりに行きたいです。

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