名古屋で住宅宿泊事業者の届け出|最初に読んで欲しい民泊の始め方

 

 

 

住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行が近づいてくるにつれて、民泊が話題に上がることが大変多くなりました。

世の中では民泊というと、今は残念ながら非常にネガティブなイメージで報道されていますが、あなたはどうお感じでしょうか。

この記事を読んでいるあなたはきっと、民泊の運営について少なからず興味をお持ちの方だと思います。もしかすると既に無許可の民泊を始めて、困っているところかもしれません。

また、民泊を始めたい意志とは裏腹に世間でのイメージがわるくて、どうしたものかとお悩みかもしれません。お気持ちは非常によくわかります。私は民泊は本当に素晴らしいものだと思っているからです。

今は法律がようやく整備されて、安心安全な仕組みができていく過渡期ですので注目度が高く、いろいろな面から話題になっています。これは一部の酷い運営をするヤミ民泊に対する事が多いです。

今後、犯罪などが起こらないようにするための仕組みが民泊新法です。まだ規制緩和や新しい決まりができていく雰囲気はあります。

不安定な状態ではありますが、ここでは民泊新法によって住宅宿泊事業者として民泊を運営したい方に向けて、何から始めるべきか、するべきことは何かなど、今後必要となる事項を説明していきます。

これを読むことで、民泊運営の住宅宿泊事業者としての知識をおさらいできることを約束します。

 

住宅宿泊事業者を取り巻く環境(全体像)

最初に教科書的で申し訳ありませんが、まずは少し民泊新法の制度の全体像を知っていただきたいと思います。

これによって民泊のオーナーとして関わる範囲がわかっていただけるからです。

コチラの関係図がわかりやすいのでご覧ください。
(クリックで別ウィンドウで拡大します)

国土交通省/住宅宿泊事業法の概要より抜粋

この図を見ても分かる通り、住宅宿泊事業者(以下、民泊オーナーと呼ぶことにします。)は、制度全体の真ん中に位置し、多くの関係機関と繋がっています。

それはそうですよね、住宅を提供する人がいなければ、民泊の制度は始まらないです。

それでは簡単に、それぞれの業者や機関との関係を見ていきましょう。

左から順にいきます。

宿泊者

宿泊者(ゲスト)とはオーナーが提供した部屋にお金を払って泊まってもらうという関係です。もう言うまでもありませんね。

ゲストとオーナーの関係が民泊制度の根幹になる部分です。日本古来の元々の民泊はこの2者だけでした。今から70年ほど前の旅館業法ができた頃の話です。

住宅宿泊仲介事業者

住宅宿泊仲介事業者とは、Airbnbに代表される民泊仲介サイトのことです。インターネット上でオーナーとゲストを引き合わせる役割を果たします。

オーナーは仲介サイトに対して自己の住宅情報の提供をして、ゲストが閲覧できるようにします。

オーナーからしたらここはライバル民泊施設に差をつけるところです。きれいな写真や紹介文やアピールポイントをドンドン出していきましょう。

都道府県知事

民泊を始めるときに書類を届け出る先が都道府県知事です。届出をした情報により管理され、監督下に置かれます。

オーナーは2ヶ月毎に民泊の運営状況について報告しなければなりません。

住宅宿泊管理業者

住宅宿泊管理業者というのは、民泊業務の代行業者のことです。

オーナーが家主不在型で民泊を運営する場合、彼らに業務を委託して実際の作業やゲストとの遣り取りをしてもらうことになります。

 

年間営業日数の制限

民泊新法の制度を使った民泊の運営は年間の営業日数が最大で180日と制限されています。この日数の中でうまく運営していくことになります。その日数の数え方のきまりは知っておく必要があるでしょう。

日数算定の具体的な方法

  • 毎年4月1日の正午から翌年の4月1日の正午までを1年とする
  • 当日正午から翌日正午までを1日とする
  • 日付をまたがずに退室しても1日とカウントする
  • 実際に宿泊させた日数でカウントする
  • 事業者ごとではなく、届出住宅ごとにカウントする

ちなみに旅館業法上の許可である簡易宿所営業と、特区民泊ではこの制限はありません。

“最大180日”というのは法律上の定めです。あとで述べますが、実際には各地方自治体によってもっと制限されている事が多いです。

最大180日しか営業できないということは、単純に考えるとビジネスとしての利益は、1年を通じて営業できる場合と比べると半分以下になってしまうということは最初に覚えておいていただきたいです。

その上でどうやって利益を出していくのか、または利益度外視で交流を求めて運営していくのかの方向性を決めることは重要です。

オーナーとしてのスタイルには2種類あります。家主居住型と家主不在型です。こちらで詳しく解説していますので是非ご一読下さい。
家主居住型?家主不在型?民泊のふたつのタイプを解説します。

 

届出する前に必要なこと

さて、ではどうしたら届出できるでしょうか。

民泊新法は、旅館業法の許可と比べるとハードルが低い・または易しいといわれています。あるいは、”届出さえすれば”始められるというような言われ方をされています。それはまるで、アンケート用紙に記入押印して役所に提出すれば完了、のような気軽な言い方にも受け取れます。

しかし、実際には違いますので注意が必要です。民泊新法の実態が明かされていくにつれて、その届出をするのにも色々と要件があることがわかってきました。

誰でもドコでも、どんな住宅でも届出ができるわけではありません。ここは覚えておきましょう。

 

対象となる住宅

届出をする住宅には(以下、届出住宅といいます)住宅としての次の4つの設備が備えられていることが必要になります。

  1. 台所
  2. 浴室
  3. トイレ
  4. 洗面設備

全て水が関係するところです。

これらの設備は全て届出住宅内に設けられていなければいけません。

例えば、「近くにスーパー銭湯があるから、お客さんは届出住宅内のお風呂はまず使わないと思う」という場合でも浴室の設置は必要です。

住宅として使われている(使われていた)のであれば、この4つの設備については大体問題はないのではないかと思います。

 

次から届出前にすることの本番です。まずは営業する地域の自治体の条例をチェックしましょう。

 

条例をチェック

民泊新法は全国的に決まりを定めた法律ですが、その下に、各自治体ごとに地域の事情に合わせて合理的な範囲で上乗せ条例を作っても良いことになっています。(実際つくられた条例は合理的な範囲といえないなどとして政府との争いがあります。)

この条例が非常にバラバラで、更に(民泊を始める人にとって)良くないことに、法律よりも厳しい方向にしか向かいません。ということは、条例が定められていたらその自治体では必ず法律よりも厳しい規制がされているということです。

逆に条例が定められてない自治体では民泊について歓迎ムードまたは積極的という態度だと思っていいでしょう。

条例では主に学校周辺や住居専用地域での営業期間を制限していることが多いです。また、すでに観光地となっているところほど厳しく規制している傾向です。

名古屋市では主に次の期間の営業が制限されています。

住居専用地域 第1種低層住居専用地域 月曜日の正午から金曜日の正午まで
第1種中高層住居専用地域
第2種低層住居専用地域
第2種中高層住居専用地域

 

制限されている地域では、より利益を出すのが難しくなってきてしまいます。

反対に、学校が近くだけれども土曜と日曜だけ営業できれば構わない、ビジネスとしての利益はもともと気にしていないという場合は問題にはなりません。

 

アパート、マンションでの確認

アパートまたは賃貸マンションで民泊を始めたい人は貸主である賃貸人がその部屋を転貸(又貸し)することを承諾しているかを確認する必要があります。

また、分譲マンションではマンション管理規約によって、民泊の運営が禁止されていないか、または規約で禁止されていなくても管理組合の方で禁止の意志がないかを確認します。

これらがOKならば確認済みであるという書面をもらいます。届出の際に添付書類として提出するためです。

民泊の禁止をしていない確認の誓約書 届出の際に添付書類として提出するためです。

しかしながら、実際はこの確認が一番厳しいと思われます。

全体の8割のマンションは禁止の方針を示しているからです。

マンション管理組合の民泊対応の決議調査

 

住宅の図面があるかどうかの確認

届出に必要な添付書類に「住宅の図面」があります。その図面には次の事項が記載されているものでなければなりません。

  1. 台所、浴室、トイレ、洗面所設備の位置
  2. 住宅の間取り、出入り口
  3. 各階の別
  4. 居室、宿泊室、宿泊者の使用する部分の床面積
  5. 非常用照明器具などの安全設備の内容

必要事項が記載されていれば手書きの図面でもOKです。しかしその場合でも、各面積を計算するのにもととなる、寸法がわかる図面を用意できることが望ましいです。

また、面積は次の消防署への提出書類にも必要になります。

 

消防設備・安全設備についての確認

住宅を民泊施設として運営するとなると、不特定多数の人が出入りすることになりますから、消防法の基準が変わってきます。旅館・ホテルと同じ「防火対象物」という基準が適用され、普通の住宅よりも業務用に近い設備をする必要が出てきます。

おもには自動火災報知機・非常用照明器具などの設置をすることになるのですが、場合によってはかなりの費用がかかることもあります。またそれを家の中のドコに取り付ければいいのかは細かい基準があり、後日立ち入りの検査もありますので、消防署か消防設備会社などの専門家に相談しましょう。

設備の設置した場合の見積もりを出してもらって、納得できれば手続きを進めます。

民泊の届出をするには添付書類として消防署の立入り検査にパスしたあとにもらえる「消防法令適合通知書」が必要になりますので、民泊を始めたいと思ったら管轄の保健所と同じタイミングで消防署にも相談をしましょう。

例外的に現状のままの設備のままでいける可能性がある場合があります。
家主居住型の民泊で、宿泊室の床面積の合計が50㎡に満たない場合です。この場合には届出までの時間とお金がかなり節約できるはずです。

 

 

届出書類を作成する

ここまでのチェックポイントを突破できたら、いよいよ届出る書類の収集作成に入っていきましょう。

このサイトでわかりやすく解説していますが、役所に何度も行くのが面倒くさい、書類は苦手、時間がかかりそう。。などの不安がある人は官公署へ提出する書類の専門家である行政書士に相談してみるのも一つの手です。

お金はかかりますが、その空いた時間を利用して民泊の運営のことを考えましょう。内装や備品などを揃えたりやることたくさんあると思います。

それでは書類についてです。

大きく分けて役所が様式を決めた届出申請書類と、その内容の裏付けとなる添付書類があります。

申請書には次のような内容を記入していきます。

  • 届け出る人
  • 民泊施設の名称・住所など
  • 代表者
  • 法定代理人(未成年の場合)
  • 法人の役員(法人の場合)
  • 住宅宿泊管理業
  • 住宅
  • 営業所
  • 住宅宿泊管理業者への委託
  • その他

また、添付書類は次のものを用意します。

  • 住宅の登記事項証明書
  • 住宅の図面
  • 住宅が賃借物件である場合の転貸の承諾書
  • マンションなどの場合は規約の写し
  • 消防法令適合通知書
  • 入居者の募集が行われている事を証する書類
  • 随時その所有者、賃借人または転借人の居住の用に供されていることを証する書類
  • 誓約書
  • 身分証明書
  • 登記されていないことの証明書

届出者が法人である場合は上記に加えて

  • 定款
  • 会社の登記事項証明書
  • 役員の身分証明書
  • 役員の登記されていないことの証明書

添付書類は各地方自治体の条例によって他にも追加される場合がありますので注意が必要です。

 

 

準備した書類を民泊制度運営システムを使って提出します。

住宅宿泊事業者の業務

法律により、住宅宿泊事業の適正な遂行のための措置ということが決められています。コレだけでは何をすればいいのかよくわかりませんよね。

簡単には以下のとおりです。

  • 部屋に宿泊者を詰めすぎないように管理。一人あたり3.3㎡の確保、定期的な清掃、換気
  • 避難機器設置などの安全確保の措置
  • 外国語による施設利用方法の説明
  • 宿泊者名簿の備え付け
  • 騒音防止等、必要事項の宿泊者への説明
  • 苦情等の処理

 

管理業者との委託契約

家主不在型で運営する場合にはこれらの業務は住宅宿泊管理業者(以下、管理業者といいます)へ委託することになります。家主居住型でやる場合にはオーナーが業務を行います。

◆委託する場合は一つの管理業者に委託しなければいけません。複数の業者に分割して委託したり、管理業務の一部をオーナー自らが行うことも認められません。管理はすべて丸投げしなければいけないということです。

丸投げを受けた管理業者は、一部の管理業務を代行業者に再委託することができます。

また管理業者が変わったら、都道府県知事に対して新しい管理業者との委託契約の書面の写しの内容を変更届に記載して届出なければなりません。

◆家主居住型でオーナーが責任を持って住宅の清掃などの管理業務の一部を他社に委託する場合には、その委託されたものは住宅宿泊管理業者には該当しないとしています。

住宅宿泊管理業者の業務、委託についてはこちらに詳しく解説した記事をご用意しています。
住宅宿泊管理業者|オーナーとの管理受託契約の中身をわかりやすく解説
住宅宿泊管理業者の業務|仕事は大きく3つに分類されています。
管理業務を委託した場合でもオーナー自らの責任で実施しなければならないことがあります。

2ヶ月ごとの報告

年間を通して、偶数月の15日までに前2ヶ月の次の事項を都道府県知事に報告します。

  • 人を宿泊させた日数
  • 宿泊者数
  • 延べ宿泊者数
  • 国籍別の宿泊者数の内訳

国は民泊の実施状況を知りたいのです。データとして集めてもっと活用していこうということでしょう。

そのために運営側としてはちょっと頻繁で面倒ですが、ここはひとつ、きちんと報告しましょう。

 

標識の掲示

事業者は、そこで民泊をやっていますよと周りの人に知らせるために、国が定める様式の標識を掲げなければなりません。

標識は届出住宅の門扉、玄関などの、概ね地上1.2メートル以上、1.8メートル以下の高さで、講習が認識しやすい一に掲示することが望ましいとされています。

適法に運営していることを堂々と示しましょう。

 

番外編|食事の提供をしたい場合

あなたが家主居住型でホストを家に招きいれるのなら、コミュニケーションを重視しているという部分があるはずです。そんなとき、一緒に食卓を囲めたらいいですね。

お金を頂いて、朝食付きプランなどを打ち出す場合には別途飲食店営業の許可が必要になります。

許可のためには「食品衛生責任者」という資格が必要です。都道府県の食品衛生協会が開催する講習会に出ることで資格をとることができます。

また、栄養士、調理師などの資格のお持ち方は講習会を受けなくても食品衛生責任者になることができます。

食事提供についてはこちらに詳しい記事をご用意しています。是非参考にしてください。
食事提供するなら飲食店営業許可が必要です。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。

民泊新法で民泊オーナーを始めたい方はまず、条例と、アパート・マンションでやるのであれば管理者の承諾について確認してみましょう。ここまではご自分でも出来るはずです。条件をクリアできれば届出までの道がひらけてきます。

届出の準備と、行政に管理されるということがわずらわしいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、人を泊めるということでは安全が確保されているほうがいいに決まっているのです。

冒頭に述べたように、民泊は本当に素晴らしい体験をくれます。もし民泊を始めようかどうか迷っている方がいたら、一度泊まってみる事をお勧めします。いままでの旅館やホテルもいいですが、新しい発見があると思うのです。

私も家族で泊まりに行きますから、その時にもしこのページを見て民泊を始めてくれていたのでしたら、声をかけてもらえたらうれしいです。

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